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上がってくる者
体験者:荻上千佳(仮)
それは、私がまだ小学1年生の頃です。
私たち家族は岐阜の祖母の家に遊びに来ていました。
その家は3階建で、田舎だということもあったとても大きい家です。
私達は遊びに来た時はいつも、3階で寝ていました。
でも、その階は古い日本人形や動物の剥製、女の人が描かれた掛け軸などがあって私はすごく嫌いでした。
ある夜、私の母、弟、そして私が3階の部屋で寝ている時、私は、ふと、目が覚めました。
別段、トイレに行きたいわけではなかったのですが、妙に目が覚めてしまいました。でも、横の2人はぐっすり眠っていて、起きる気配はありません。
すると、「ギシ、ギシ・・・」と
誰かが階段を上ってくる音がしたのです。
その時は少しドキッとしただけした。
どうせ、祖母が上がってきたのだと思いました。
確かに、上がってくる人は祖母以外に考えられませんし、曾祖母は体が不自由なので、上がれるはずがありません。
でも、足音が近づくにつれ妙な違和感を感じました。
2階から3階への階段は手すりがないうえ、急なので私達でさえ、手をつきながら上っていました。
だから、祖母が上るときはいつもゆっくりと、手をつく音が聞こえるはずでした。
でも、その足音は祖母のそれとは思えないほどスムーズに階段を上ってきたのです。
すると、その足音はついに3階の廊下を歩き始めました。
「ギシ、ギシ・・・」
私は怖くなって、隣の母の腕にしがみつきました。
そのうち、足音が止んだかと思うと
窓を閉めているのに
ゆっくりとドアが開いたのです。
でも、誰も入ってきませんでした。
翌朝、祖母に深夜3階に上がってきたか、とたずねると、上がってない、という答えが返ってきました。
その時は「嘘だぁwwwww」と言って笑ってごまかしましたが
実際には、怖さと焦りで一杯でした。
あの足音は一体誰だったのでしょうか・・・
その時、曾祖母はまだ生きていたのですがもうベッドから起き上がることさえままならない状態でした。